リーチとフリークエンシーのデータは、効果的な広告キャンペーンに欠かせない要素ですが、現行のマーケティング ミックス モデリング(MMM)では考慮されていないことが多くあります。一部の従来型のメディア チャネルには、リーチとフリークエンシーを測る正確な指標がないためです。通常、MMM はインプレッションを入力として使用しますが、その方法では、1 人のユーザーが広告を複数回目にすることもあり、広告を目にした回数によって影響が異なる場合もあるという事実が考慮されません。この問題を克服するために、Meridian では、単一のマーケティング指標ではなく、リーチとフリークエンシーのデータに基づいて、あらゆるメディア チャネルの効果をモデル化できるようになっています。この手法では、ビジネス成果に対するマーケティングの影響をより正確に推定できる可能性があり、フリークエンシーの最適化案を通じてキャンペーンの実施を最適化しやすくなります。
モデリングを行う際は、リーチとフリークエンシーのデータを、売り上げデータやコントロール データと同様に、地域や時間と同じレベルの粒度にする必要があります。
また、次の点も大事です。
リーチのデータは、連続する期間に広告を見たユーザーの累積数ではなく、各期間にチャネルの広告を見たユニーク ユーザー数である必要があります。
フリークエンシーのデータは、各期間のインプレッションの合計数をリーチで割った値になります。
メディア効果は、予想売り上げの増加にどれだけ貢献したかを示します。リーチとフリークエンシーのデータがあるチャネルの場合、地域 \(g\) と期間 \(t\) におけるチャネル \(i^{th}\) のメディア効果は次のようにモデル化されます。
詳細は次のとおりです。
- \(f_{g,t,i}^{[RF]}\) は平均フリークエンシーです。
- \(r_{g,t,i}^{[RF]}=L_{g,i}^{[RF]}(\overset {\cdot \cdot} r_{g,t,i})^{[RF]}\) は変換後のリーチです。これは、チャネルの人口と中央値に基づいてスケーリングされます。詳しくは、データの入力をご覧ください。
この効果を算出する際は、まず平均フリークエンシー \(f_{g,t,i}^{[RF]}\) に Hill 関数を適用し、飽和効果を調整します。各地域と週の Hill 変換したフリークエンシーに、変換後のリーチを掛けます。その値に、Adstock 関数による重み付けが適用され、時間経過を伴うメディア効果の遅延を考慮に入れます。
Hill 関数を使用すると、フリークエンシーの関数としてメディア効果を S 字型にすることができます。つまり、費用対効果重視で最適な平均リーチが 1 より大きくなる可能性があります。S 字型の曲線には、インプレッションあたりの結果の増分重視で最適なフリークエンシーがあるという直感が現れています。ブランド想起率を上げるためには、最低限のフリークエンシーが必要になる場合もありますが、フリークエンシーが多すぎると、広告疲れや費用対効果の低下を招く恐れがあります。
フリークエンシーを固定した状態では、リーチと売り上げ反応は直線的な関係性があると仮定されます。リーチはターゲット オーディエンスの定義によって変わりますが、そのターゲット オーディエンスは、広告への反応がそれぞれに異なる複数のグループを組み合わせて構成されます。リーチ効果が線形であると仮定すると、複数のオーディエンス間のリーチは比例的に変化すると暗黙的に仮定できます。ただし、リーチの合計が大きくなるほど、リーチできるターゲット グループのユーザーが増えにくくなる可能性があります。その場合、リーチの限界費用対効果が低下する恐れがあります。Meridian では、モデルの過剰パラメータ化、パラメータの識別不能、マルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC)の収束問題を回避するために、リーチ効果を線形に制限しています。データがある観測済みのリーチ値の範囲を大幅に超えて、この線形効果を外挿しないように注意してください。
リーチとフリークエンシーの詳細については、リーチとフリークエンシーのデータを組み込んだ階層ベイズメディア ミックスモデルをご覧ください。
費用対効果重視と最適化重視の想定フリークエンシーの違い
費用対効果重視と最適化重視の想定フリークエンシーは異なります。必要に応じて、最適化重視で想定フリークエンシーを調整できます。
ROI、mROI、応答曲線で説明したように、費用対効果は、MMM にデータがある期間中にマーケティングが実施されたチャネルの費用対効果を測定した値です。地域や時間帯へのインプレッションの配分方法や、そのチャネルの過去のフリークエンシーなどによって、チャネルでのマーケティングの実施方法が決まります。
最適化では、今後のキャンペーンが最適なフリークエンシーで実施されると仮定します。これは、フリークエンシーは一般に広告主様が制御するためです(特にデジタル チャネルの場合)。最適なフリークエンシーが過去のフリークエンシーと異なる場合、予算配分を最適化した状態でのチャネルのパフォーマンス(費用対効果が基準)が、そのチャネルの過去のパフォーマンスと一致しない場合があります。現在のフリークエンシーが最適なフリークエンシーと大きく異なる場合は、この傾向が強まります。
今後のキャンペーンを最適なフリークエンシーで実施しない場合は、最適化オプションを使用して仮定のフリークエンシーを変更できます。この方法は、特定の平均フリークエンシーでマーケティングを実施できないチャネルに有効です。